サクラマス研究

サクラマスの生物学

サクラマスの生物学

アングラーにとって、サクラマスの生態は興味が尽きません。しかし、諸氏はよくご存知でしょうから、この頁は飛ばして結構です。関心のある方だけご覧下さい。(この頁には私のデータは出ていません。次頁はこちらです。)

サクラマスの研究、参考文献

私はアングラーであり、魚類学者ではありません。したがって、ここで紹介するサクラマスの生物学は、私が自ら経験したことと書物から学んだものです。知ったかぶりの批難を免れないかもしれません。お許し下さい。

特に参考にした本とサイトを紹介します。私のようなアマチュアがほかのアマチュアサイトを参考にすると、情報の確かさが益々保証されなくなります。したがって、そのようなサイトは全く参考にしませんでした。「私のサイトを参考にしていないのはけしからん。」と憤慨されたサイトオーナーさん、お許し下さい。参考図書のページも参照して下さい。

サクラマスの学問的名称

ご存知のようにサクラマスとヤマメは生物学的に同一種です。混乱を避けるため、このホームページでは特別な場合を除きサクラマスの名称で統一することにします。前述の中央水産研究所のHP等によると、サクラマスの正式な名称はヤマメ系サクラマスで、次の3群に分類されます。

  1. 降海型
  2. 河川残留型
  3. 湖沼型

すなわち、アングラーがヤマメと通常呼んでいる魚体は、正式には「ヤマメ系サクラマス、河川残留型」、サクラマスは「ヤマメ系サクラマス、降海型と湖沼型」です。「降海型」は海に降って海洋生活を営むサクラマスであり、「湖沼型」は湖やダム湖に分布するサクラマスです。「湖沼型」は、自然状態では北海道洞爺湖等に分布しています。

十和田湖や中禅寺湖のサクラマスは移植されたサクラマスです。その湖固有の生態系から見れば、サクラマスはブラックバス同様の「外来魚」かもしれません。また、奥只見湖等各地のダム湖のサクラマスも「湖沼型」です。裏磐梯桧原湖のサクラマスは、もともと自然分布していたものです。現在は放流に依存しているのかも知れませんが。

ヤマメ系サクラマス以外のサクラマス属には、アマゴ系サクラマス、ビワマス、タイワンマス(台湾にしかいない)の3種類がいます。ちなみに、アマゴ系サクラマスの降海型はご存知サツキマスです。

これら4種類のサクラマス属の魚は極めて近い種類です。なお、降海型のサクラマス釣りの経験は語るに十分だが、ビワマスやサツキマス、タイワンマスに関する釣りの経験は皆無なので、それらについてはこのホームページの話題に取り上げません。知ったかぶりは嫌いです。

参考までに、下に私の釣った魚の写真を示します。ヤマメ(オス27cm、写真1)は大渓流のミノーイングの釣果、サクラマス(メス57cm、写真2)は本流のルアーフィッシングの釣果、アマゴは昭和60年頃四国在住時徳島県吉野川水系穴吹川弓道沢でのフライフィッシングの釣果です。写真をクリックして拡大するとよくわかりますが、アマゴはヤマメそっくりです。しかし、体側に朱色の点が散りばめられており、それがアマゴの特徴となっています。なお、朱点を損なわないようにしたため拡大写真は重いです。

写真をクリックすると大きくなる。
ルアーフィッシングで釣ったヤマメ27cm
写真1
ヤマメ
ルアーフィッシングで釣ったサクラマス57cm
写真2
サクラマス
フライフィッシングで釣ったアマゴ
写真3
アマゴ

サクラマスの分布

サクラマスは、北海道、東北地方、本州日本海側に分布します。

降海型と河川残留型

本州北部日本海側では、川で釣れるヤマメはオスです(河川残留型)。たまにメスの混じることはありますが、ほとんどがオスです。そして、メスの全部とオスの一部が海に降ってサクラマスとなります(降海型)。したがって、機能する魚道のないダムや堰堤ができると、その上流のヤマメはオスばかりになり全滅します。まれに、メスのいる時期に流れが遮断されれば定着することもありますが、まれです。私の確認した限りでは1ヶ所だけです。あちこち、ダムや堰堤の上で釣れるヤマメはいわゆる「価値のない放流物」です。

関東以南の温暖な地方では、ほとんどのオスもメスも一生河川で生活し、サクラマスにはなるものは少ないようです。しかし、全くいないわけではありません。 逆に、北海道など寒冷な地方では、降海するオスの割合が増加します。

サクラマスの一生

秋に、渓流でオスのヤマメとメスのサクラマスがペアとなって産卵します。受精卵は、冬期の間に孵化して当歳魚となり、1年を川で過します。 翌年の冬から春にかけての間、2歳魚となったヤマメのうち、ほとんどのメスと、一部のオスは銀毛化(スモルト)します。銀毛化とは、魚体が銀白色となり、パーマークが不明瞭になることです。さらにウロコは剥がれやすくなり背鰭先端は黒くなりまる。これは海水生活の準備段階を意味します。銀毛化した魚体を銀毛ヤマメと呼びます。サイズは10数pで、春先、まだ水温が低いうちから淵の中層でさかんにエサを摂取するのが見えます。

銀毛ヤマメは3〜4月頃降海します。降海後、オホーツク海方面を回遊しながら動物性のエサを摂取し、急速に成長します。3歳魚となった翌年の3月〜6月頃、川を遡上します。これがサクラマスです。そしてそのサイズは平均50〜60pです。

川に入ったサクラマスは、秋まで全く摂食せずに過ごします。そして秋の産卵期を迎えます。アングラーの中にはサクラマスはエサを食べるとかたくなに信じている人がいます。確かに、釣り上げたサクラマスの胃内に小魚が含まれることはありますが、稀です。これは例外であり、例外を見て全体を判断してはいけないと思います。私のサクラマスの釣果データを見ても、摂食活動をするサクラマスは例外です。

なお、サクラマスの生態には変異が存在します。上述と異なる生活史を送るサクラマスもいますが、少数でしかも小型のことが多いです(ジャックや戻りヤマメなど)。


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