サクラマス研究

サクラマスのルアー釣りと水温

サクラマスのルアー釣りと水温

サクラマスの釣果と川の水温の関係を検討しました。サクラマス119尾の記録のうち、15尾で水温測定の記録がありませんでした。したがって、サクラマス104尾のデータ解析になります。

水温測定について

生態学の教科書には、「湖沼は、水温躍層や対流により水深で水温が異なる」、「河川の水温はどこも均一である」と、記載されています。それは誤りです。河川でも測定場所で水温はかなり違います。したがって、サクラマス釣りのデータとして水温を測定する際は、次の点を留意しなければなりません。

  • 下流域では、海水の楔状現象により、表層と中深層で水温がかなり異なる。
  • ユスリカのいるような淀みは、サクラマスのいる流れの中より水温が高い。したがって、流れの中で測定すること。
  • 湧水のある地点は、相対的に早期には水温が高く、後期には低い。河川には湧水がいたるところにある。間違っても、水温計を湧水地点に投げ込まない。
  • テトラポットや護岸の脇は、早朝でも前日の余熱で暖かなことがある。
  • 晴天時や水位の変化の大きい時は、水温変化も大きく、マメに測定する必要がある。

水温別サクラマスの釣果数:サクラマス全体での解析

サクラマス104尾の、水温別釣果数を図1に示しました。なお、水温測定値の小数点以下は四捨五入しました。

水温別サクラマスの釣果数、サクラマス全体の場合

■サクラマスのルアーフィッシングと低水温

サクラマスが釣れた最低水温は4℃と、かなり低温でした。しかし、10℃未満では10尾(9.6%)しか釣れませんでした。河川にもよりますが、シーズン開幕当初の水温は2〜6℃程度です。このような低水温では、イワナのルアー釣りならともかく、ヤマメではかなり苦戦します。ヤマメの降海型であるサクラマスも、10℃を越す水温が望ましいようです。

ただし、河口域では、海水の楔状現象により表層水温が4℃以下でも中層以下は海水温に近いはずです。こんなところでは、寒い時期から高活性のようです。

■サクラマスのルアーフィッシングと高水温

サクラマスが釣れた最高水温は16℃でした。ニジマスならもっと高温でも果敢なアタックがあります。サクラマスでも、他の条件がよければもっと高水温でもヒットするようですが、私は経験がありません。本流の水温が17〜18℃になったら、涼しい源流のフライフィッシングやソルトウォータールアーフィッシングに転向した方がいいと思います。第一、アユ釣りが始まります。そんな中でルアーをキャストしていると、「あいつ、まだサクラマスを狙っている、あきらめの悪いヤツだな。」なんて噂されて、みっともないです。

■サクラマスのルアーフィッシングの最適水温

図1を見る限り、サクラマスのルアーフィッシングの最適水温は、12℃と15℃の2峰性です。 この2峰性の原因を、図2〜4で解明しました。次をご覧下さい。

水温別サクラマスの釣果数:40cm未満のサクラマスでの解析

図1で解析したサクラマス104尾のうち、40cm未満の小型のサクラマス15尾を赤で示したのが図2です。サクラマス釣りのシーズンでお話ししたように、5月下旬以降、40cm未満の小型のサクラマスが遡上してきます。それを反映して、図2では、水温13〜16℃に小型のサクラマスの釣果がみられます。

水温別サクラマスの釣果数、その2

下の図3では、この小型のサクラマスだけを取り出してみました。ご覧のように、小型のサクラマスは水温15℃をピークに釣れることがわかります。しかし、これは小型のサクラマスが比較的高水温を好むことを意味するわけではありません。あくまでも、遡上時期の差だと思います。

水温別サクラマスの釣果数、その3

水温別サクラマスの釣果数:40cm以上のサクラマスでの解析

図1で解析したサクラマス104尾のうち、40cm以上のサクラマス89尾について、水温別の釣果数を示します(図4)。40cm以上のサクラマスの限った場合、サクラマスのルアーフィッシングの最適水温は間違いなく12℃です。この水温を目安に釣行すれば、ヒットの確率が高いかもしれません。

水温別サクラマスの釣果数、その4

水温別サクラマスの釣果数が2峰性になる理由

40cm以上のサクラマスと40cm未満のサクラマスでは、水温別釣果数のピークが異なることがわかりました。このため、図1のグラフが2峰性となるわけです。


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