ルアーフィッシング「明日は釣れるといいなあ!」

昭和57年夏、黒部川源流のイワナ

昭和57年夏、学生最後の夏休みはイワナ釣りをしながら黒部源流川地帯を踏破する計画でした。もちろん単独行です。

大糸線信濃大町から扇沢に入り、幕営装備、14日分の食料と酒、毛鉤釣り一式を巨大なザックに詰め込み、針ノ木雪渓を登りました。そして、戦国武将佐々成政公で有名な針ノ木峠(2536m)を越え、イワナを釣りながら針ノ木谷を下りました。するとそこは黒部のダム湖です。右岸の捲き道を遡上し、東沢谷に入りました。イワナを釣りながらこの沢を遡上して稜線に至り、水晶岳(2986m)を越して雲ノ平に降り、そこでまたイワナを釣り、その後、三俣蓮華岳(2841m)、双六岳(2860m)、槍ヶ岳(3180m)を縦走し、上高地に至るという行程です。

この年の夏は天候不順でした。毎日雨、その後は台風が日本アルプスを直撃、各地で遭難が相次ぎ、私も増水した沢で停滞を余儀なくされました。後日知ったところでは、黒部ダム下流で幕営していた大阪の山岳会員5名が遭難死したとのことです。私の下流での出来事でもあり、また友人の従兄弟もメンバーだったとのこと、皆様のご冥福を心からお祈りします。

そんな中、この釣行で最大のイワナ(40cm)を釣り上げました。ウナギのようにやせ細り、顔と尾ビレがやけにでかいイワナでしたが、貴重な食料ですので解体して食べました。この際、胃からサンショウウオが3匹も出てきたのです。沢のイワナの胃の中身はたいてい昆虫です。4本足の動物を発見したのは初めての経験でした。

その後、天候の回復を待って東沢谷を遡上しました。私は、沢が雪渓に閉ざされるまで高山植物の中、毛鉤を振りました。驚いたことに、イワナは雪渓間近まで生息していました。沢を登り切った稜線の標高が約2800mでしたが、イワナは標高2300m辺りまで釣れたことになります。サンショウウオの件とともに、イワナのたくましい生命力に感動した次第です。

手元に、この山行の際に使用した地形図があります。悪天候の為ボロボロになっています。もうあの沢を訪れることはきっとありませんが、この地図はイワナの思い出とともに私の一生の宝です(戻る)


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