ルアーフィッシングの思い出

20世紀最後のサクラマス

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20世紀最後のサクラマス、結構良い型だ。
写真1
このサクラマスのことは生涯忘れないだろう。
写真2

初夏の川

平成12年6月30日、晴れ。水温16度。川畔に咲いていた野バラの白い花も終り、日差しは夏そのものでした。小雪のちらつく3月下旬から始めたサクラマス釣りも、いよいよ終盤です。アングラーは、私の500m上流に古い釣友がひとり、一生懸命ミノーを引いているだけでした。

サクラマス、ヒット!

夜明けから釣り始めましたが、全く当たらず、もう今年は今日で終りにしようと、半分あきらめかけていました。ダーっと単調に流れる深い瀬で、ピュアスプーン18gをダウンクロスキャストして、川底を舐めるようにスイングさせました。全くリーリングをしなかったので、ロッドを片手で持ち、もう片方の手はズボンのポケットに突っ込んだままでした。

はるか下流60m位の所で、流れの圧力だけでゆっくりスイングしているスプーンが、ちょうど流芯を越した瞬間に、物凄い衝撃が伝わりました。危うく、ロッドを川に落とすところでした。すぐ、合わせて、ポケットの中の手も動員して糸ふけを取り、さらに3発追い合わせを食らわせました。

うまくのったな、と思ったのですが、どうも様子が違います。いつもの、身をくねらせるようなサクラマスの動きが伝わってこないのです。全く動きません。根がかりだったのかな、と一瞬疑いましたが、さっきの衝撃は、間違いなく魚です。いつまでたっても動かないので、ラインを緩ませないようにすばやく巻き取りながら、河原を走り、一気に魚との間合いを詰めました。魚と私の距離が20m位になったところで、ようやく魚が動き始め、水面が盛り上がるのが見えたのです。

サクラマスだ。結構でかい。

サクラマスだ。結構でかい。 水面でバシャバシャされるとばれるので、ロッドテンションをちょっと緩めて潜らせました。サクラマスは、川底でモゾモゾしていましたが、その後ゆっくりと簡単に寄ってきました。あまりにあっけない最後です。ところが、5mくらいのところまで来たら、私には一瞬見えたのです。ヤツの肩から背中にかけての筋肉が盛り上がるのが。

次の瞬間、川面を逆V字に裂き、サクラマスは沖めがけて突進しました。ドラッグが唸り、サクラマスは流芯の中へ帰って行きました。

とにかく、サクラマスを休ませないように常にプレッシャーをかけて、川底でヤツを消耗させなければ!浮かせたり、バシャバシャさせなければ、ばれないはずだ!

ふと、上流に目をやると、友人は私のファイトにまったく気が付かない様子です。でもすぐ、自分で自分を戒めました、もっと集中しろ、と。

何度かやり取りをするうちに、サクラマスはゆっくりと上流に泳ぎ始めました。私の経験では、これは、へばってきた証拠です。ロッドを大きくあおって、サクラマスを川底から浮かせ、ヤツの真後ろに回りこみました。ロッドを立てるとサクラマスは後ろに引かれます。サクラマスはそれを嫌がって上流にグーッと走ります。とまったら、また、ロッドを立ててサクラマスを引っ張ります。こんなことをしながら、最後はパッとタモですくってしまいました。

8時3分、ゲット!62cm 2.4Kgのちょっとスリムなメスのサクラマスでした。ウロコは全くはがれない、川の生活にかなりなじんだ、夏のマスでした。

20世紀最後のサクラマス

運良くこんな素敵なサクラマスが釣れて、とても感激しました。これを20世紀最後の、私のサクラマスにしようと心に決めました。

写真1をご覧下さい。スリムで、ウロコはびっしり詰まっています。私は、この夏のマスが大好きです。写真2もご覧下さい。ストリンガーを忘れたので、拾ったヒモをエラブタに通しました。けっして魚屋さんで買った新巻鮭ではありません。

これが私の世紀マスでした。

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